Story05 /エッセイ:羊毛作家 緒方伶香さん

【織る】


 

大学の染織科の授業で脱落して以来、ずっと封印してきた織り。

 

二度とやらないだろうと思っていましたが、きっかけは「アナンダ」吉祥寺店で出会ったリジット機(ばた)でした。

その織り機は、経糸の張り方さえ覚えれば楽々平織が楽しめるシンプルな構造で、紡ぎ車でも有名なニュージーランドashford社の製品です。

 

同じような織り機は、様々なメーカーから販売されていますが、このリジット機は、経糸を交互に開くための綜絖がついていることと本体を使ってダイレクトに整経できる(縦糸を張る)という点が作業効率の良さにつながり、小難しいことを抜きに織りを楽しめる優れものです。

 

発売以来、度々改良を重ね、現在は平織以外の組織織りにも対応しています。


しかしながら、羊毛のしごとの中で、紡ぎに次いでハードルが高いのが織りではないかと感じています。

 

まず、織り機を買わなきゃならない。種類は?メーカーは?お値段は?買ったところで本当に続けるのだろうか?などなど、まずは疑問と不安の嵐です。

 

絵織、カード織り、もじり織り、8枚綜絖、糸綜絖…と押し寄せる専門用語。

大先輩たちの会話はちんぷんかんぷん。未知の世界に思え、こりゃ無理だと私自身も尻込みしていました。

 

道具をクリアしたら、次は教室問題が待ち受けます。

自分が織りたいものを学べる場所に、なかなかたどり着けないという問題です。

 

特に多綜絖は狭き門ですが、このまま多綜絖の楽しみを知らずに織り人生を終えて良いものかと、長年自問自答していました。


そんな時に出会ったのが吉祥寺にアトリエを構える「trois temps」です。

 

そこで作りだされる織地は、デザイナーの藤野さんが創案した唯一無二の柄で、はじめてアトリエを訪ねた時、熟練のスタッフさんが織り上げる姿がとても格好良く見えました。

 

そういうわけで、私も重い腰を上げ、ついに8枚綜絖をはじめました。

つい昨年のことですが、多綜絖が織りなす模様の奥深さに触れ、織りの楽しみがいっそう広がりました。

 

▲多綜絖なら綾織やヘリンボーン柄、平織の完成度も上がります
▲多綜絖なら綾織やヘリンボーン柄、平織の完成度も上がります

 

織りをもっと手軽に楽しめるようにするにはどうしたら良いか?

織りのことを知ってもらうには?

 

最近はそんなことを考えています。

 


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trois temps

東京都武蔵野市吉祥寺北町3-5-8-109

mail@trois-temps.com

TEL:080-7004-2758

https://www.trois-temps.com

Instagram @troistemps

※現在、WORKSHOPは不定期で開催



 →緒方伶香さんの連載エッセイはこちらから

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【STORY1】紡ぐ、かためる、染める、編む、織る・・・。無限に広がる、つくる楽しみ。

【STORY2】気軽に楽しめる羊毛フェルト

【STORY3】紡ぐ

【STORY4】染める

【STORY5】織る

 

→羊毛作家 緒方伶香さんへのインタビュー特集

前編はこちらから

後編はこちらから



【プロフィール】

緒方伶香(オガタ レイコ)

 

美大卒業後、テキスタイルデザイナーを経て、東京・吉祥寺にある「アナンダ」のスタッフとして羊毛に親しむ。現在はワークショップを開催したり、羊毛のある暮らしや作品を雑誌やテレビで紹介している。

 

羊毛に関する著書多数。『きほんの糸紡ぎ』『えんぎもんフェルト』『羊毛フェルトの教科書』(誠文堂新光社)

『手のひらの動物・羊毛でつくる絶滅危惧種』『羊毛のしごと+』(主婦の友社)

Instagram @reko_1969

◉ワークショップ

@walnut_tokyo  さんで毎月開催中(現在満席中)

◉ノマドニッター編み部

@tegamisha 主催毎月開催中

 

 

 


Photo & Text :Reiko OGATA

Profile Photo  :Chie ENDO