Interview03/ illustration & embroidery にのみやなつこさん 後編



【にのみやなつこさんプロフィール】

 

武蔵野美術短期大学生活デザイン学科卒。

インテリア・商品企画会社等経て、1998 年よりフリーランスイラストレータとして活動開始。主にコラムに添えるカット、イラストレシピ、似顔絵、4コマ漫画、ロゴマークデザインなど。

わかりやすく、ほのぼのとしたユーモアを感じさせる女性向けのイラストが得意。

一方で2012 年より刺繍を施したアクセサリーやアート作品の制作・展示・販売、ワークショップやおしゃベりしながら手芸を楽しむカフェの企画・運営にも力を入れる。

 

【HP】https://nino-natsuko.wixsite.com/2016

【Instagram】

◉イラストや日々の生活 @ninomiya_natsuko

◉剌繍  @ninomiya_natsuko817 




刺繍作品の制作について教えていただけますか。

どのような作り方をされていらっしゃるのでしょう。

– にのみや さん 

私の作品は、フレンチノットという方法で制作しています。

難しい技法は使っていないのですが、どんな糸を使うかにはこだわって制作しています。

 

普通の刺繍糸だけでなく、何種類かの糸を撚り合わせてみたり、ビーズやリリアンの糸、毛糸など面白いものをどんどんミックスして使ってみるようにします。

それぞれの糸の色、太さ、バランスで作品の表情が変わって行くのでとても面白いです。いろいろ試行錯誤してこの制作方法にたどり着きました。

 

現在一番力を入れて商品展開しているのが

「Wishing Particles:::希望粒子:::」というシリーズです。

 

刺繍のひと粒(フレンチノットという技法)を物質の最小単位である素粒子に見立て、希望を抱いて自由に存在を広げていく様子を表現したブローチなどのアクセサリーやアート作品で、次はどこへ剌すか素粒子の気持ちになって針を進めています。


こちらのシリーズは風呂敷&風呂敷バッグの「寅の助」さんとのコラボ販売をすることが多いです。

寅の助さん考案のオリジナル風呂敷バッグに映えるブローチを多く制作・販売しています。

 

【風呂敷&風呂敷バッグの「寅の助」】

https://www.toranosuke3.jp/

 

にのみやさんの企画されているワークショップで

誰でも参加できるものがあれば教えてください。

― にのみや さん

一つ目は、被災地支援:ぐるっとブレスレットワークショップというものがあります。

好きな毛糸を6 本選んだらぐるぐるぐるっとするだけで素敵なブレスレットが出来上がるというワークショップです。縫い目を数えたりする必要がないので、おしゃベリしながら楽しくできます。


▲ぐるっとブレスレット 
▲ぐるっとブレスレット 

 

参加費から311 円(3 月11 日にちなんで)を東日本大震災などの被災地支援団体などに送金します。

2012 年から「アートマルシェ神田」というギャラリーが始めた活動で、私が引き継ぎました。無理なくのんびり続けていきたいと思っています。

 

【被災地支援:ぐるっとブレスレットワークショップ】フェイスブックページ

https://www.facebook.com/guruttobracelet/

 

 二つ目は、手芸カフェcouscous クスクスです。

場所を借りて、手元はチクチク(あみあみ)、口元はクスクス(笑)する手芸カフェを企画・開催しています。

 

しばらくお休みしていますが、流行りの感染症が収まった際には再開したいと思っています。

 

【手芸カフェ:couscousクスクス】サイト

https://nino-natsuko.wixsite.com/couscous/


イラストのお仕事と、刺繍作品制作は

どのような関係性なのでしょう。それぞれ、

どのような気持ちで制作されていますか。

 

―にのみや さん

イラストは商業イラストなのでクライアントの望んだものを描く受け身の作業です。

 

描いたものがクライアントに要望にあっているにか、気に入ってもらえるのか、納品まで毎回心配です。これが結構大きなストレスなんですね。

 

刺繍の方は、最初は自分が身につけたいものを自発的に作り始めました。

 

自分が好きな糸で好きなものを作ってそれ見てもらって、気に入ってもらったら買っていただける。好きなように作って良い。その自由さと、自分が良いと思ったものをお客様が気に手に取って、気に入って買ってくださることに喜びと醍醐味があります。

 


刺繍作品は思い付いたアイデアを形にしていくのか、

作っていくうちに自然にできたものが作品に

なるのか、どちらでしょうか。

 

―にのみや さん

刺繍の作品は、ほとんどが自分の頭の中のイメージを具現化する作業です。

 

頭の中に思い描いたイメージを早く形にして見てみたい、という思いで一気に制作します。完成したものを、最初に自分が見てみたい!という一心です。

何と言っても自由に心赴くまま針を刺して行けるところが私に向いていると思います。

 


▲使うものは刺繍糸に限らず、毛糸やビーズなど面白い!と思ったものを取り入れている。
▲使うものは刺繍糸に限らず、毛糸やビーズなど面白い!と思ったものを取り入れている。

派手めのアクセサリーは付けるのに少し勇気が必要だけれど、会話のきっかけにもなり、良いコミュニケーションツールにもなります。

 

最後に、これからやってみたいことがあれば、

教えてください。

またにのみやさんにとって手仕事とは何でしょうか。

 

ーにのみやさん

今後は、制作している作品と洋服とのコーディネートを提案してみたいです。

なかなか時間が取れず、数を作ることは難しいのですが、見た時より、実際身につけた時の方が素敵だと思うのです。

 

刺繍は立ってでも座ってでもできる、リビングでも台所の一角でもできることですよね。やっているとだんだん心が落ち着いてくる、祈るような営みです。

これはどんなに世の中がどう変化していったとしても廃れないのではないでしょうか。

 

恥ずかしながら、ようやくこの歳になって自然の美しさ目を向けるようになっています。今日も電車から見える木々の美しさに感銘をうけ、こんな景色を刺繍で表現したいという気持ちになりました。

 

今でもまだ、表現したい形には到達できていないんです。

 

まだまだ私の中にふつふつと湧き上がるイメージがあるので、その熱い思いを形にして見て見たい!と思っています。これからは慌てず騒がず(笑)、落ち着いて、より丁寧に、じっくりひとつひとつ、ペンを、針を、進めていきたいと思っています。

 

そんな風に思えるようになった自分に驚くと同時に「あら、いいんじゃない?」と感心もしちゃってます。

 



▶︎にのみやなつこさんのインタビュー前編はこちらから

 


[取材・撮影 (にのみや さん提供以外)] : 遠藤ちえ / 遠藤写真事務所 @chie3endo

[撮影会場]STUDIO OLIYA