【飯田みちるさんプロフィール】
1993年 手織り布と出会い、国立の「はんの木工房」で織りを学び始める
2000年 織りの楽しさを伝えたいと「織工房Mai」(草木染め、手織りの教室)を開設 現在に至る
前後してラオスに織りの研修と見学旅行に参加
2001年探していた透ける布を織る方法としてもじり織りを知り、文化学院アーツ&クラフツセンターで
畑中千恵子氏に師事
翌年 渡邊万知子氏から絣織りを学ぶ
京都の日本海側で丹後藤織り保存会の講習を受講し その後保存会に入会
2001年 技術や情報が足りないと感じて京都芸術大学通信教育部染織コースで学ぶ
2017年、2018年、2019年 カンボジアの農村地域で女性の経済的自立を支援するワークショップ
カンボジアコットンクラブでボランティアとして織りを教える
それではまず、
飯田さんの作家活動についてお聞かせください。
制作のテーマを教えていただけますか。
―飯田さん
私は個展や展示会の時には必ず「絣」と「もじり織り」を制作します。この二つが私にとっては大切な表現方法と考えていて、毎回中心となる作品として制作しています。
また、展示会の共通のテーマは「風と水」です。絣が「風」もじりが「水」というイメージで、そのテーマを布に落とし込んで表現しています。
私がやっているもじりは不定形なので水が流れているように見えるといいなと思います。
そして、布が揺れたり、光の当たり方で見え方が変わったりする。そこに見えているのは風なのです。
◉2016年5月 飯田みちる織物展−青のある風景
会場: 西荻窪 ギャラリーみずのそら(写真提供: 飯田みちるさん)
様々な織りへの探究心があり、あちこちで学ばれていますね。
学ぶことが飯田さんの作品作りの大切なベース
となっているということでしょうか。
―飯田さん
実は教室を運営し始めた頃と前後して、2001年に京都芸術大学の通信学部の織コース(現在は染織コース)へ入学しました。独立して教えるには知識や情報が足りないのではと思い始めたからです。京都芸術大学を2007年3月に卒業し、個展を開催しました。
京都芸術大学に在学中に文化学院にも通いました。ひとつのことを学ぶと次々に学びたいこと、やってみたいことが出てくるのですよね。
絣は安田先生(はんの木工房)のところで学び、その後文化学院のアートアンドクラフトセンターで、インドネシアの絣の研究で有名な渡辺万知子先生から学びました。
もじり織りは、同センターでアンデスのもじり織りをされている畑中千恵子先生から学びました。コロナ禍の前までは、先生と一緒に受講した方達と2ヶ月に一回、作品や写真を持ち寄って作品について考察するということをクラス終了後も続けていました。最後は先生を入れて5名ほどになりました。みんな好きなので続いていたのですよね。現在は織りをなさらない方もいらっしゃいます。
畑中先生は本当に織りに対して芯の通った方で、この先生に出会えて本当に良かったと思っています。
学生をしながら教室も運営していたので、文化学院の方は課題をほとんど提出できませんでした。その後、畑中先生のアシスタントさせていただいた時に、課題を全部やり直しました。これもとても貴重な学びの経験でした。
絣ももじり織りもベースとなる基礎を学んだ後、表現したい方法を求めて試行錯誤し、自分なりのアレンジを加えた作品を制作しています。
自然からもらう草木染めで糸を染めて、光や風を表現したいと取り組み続けています。
◉2020年 飯田みちる織物展−風の色 水のしらべ 刻を映す布 青のある風景
会場:西荻窪 ギャラリーみずのそら(写真提供: 飯田みちるさん)
織りをしている方には自分の作家活動における作風やテーマというものを探して
いる方も多いと思うのですが、何かヒントになることがあればお話いただけますか。
−飯田さん
作品作りでは私も今でも悩んだり迷ったりしていますよ。ただ、自分が作りたいものを表現してくれる糸との出会ったことも大きかったかもしれません。
色々な制作の表現を学んで、その表現ができる糸を見つけることも大切です。
それから、見せる布だけでなく、使える布をつくるというということも継続しています。マフラーやストール、その他生活で使える、役立つ布ですよね。
制作した作品は、欲しいという方がおられたら自分のところに留めておかずに手放していくようにしています。
◉2022年5月 飯田みちる織物展−青のある風景
西荻窪 ギャラリーみずのそら(写真提供: 飯田みちるさん)
◉2020年10月 麻とカシミヤのある暮らし
会場:所沢 Cafe Gallery Forma (写真提供: 飯田みちるさん)
作品制作や教室運営で忙しい日々だと思います。
どのように息抜きをしたり気持ちをを切り替えていますか。
−飯田さん
私が一番リフレッシュできるのはひとり旅の時間でしょうか。京都の丹後藤織保存会で学んだ後、同研究会に所属しています。コロナ禍の以前は1年に1度は京都の丹後に通っていました。
保存会へ参加したり、京都造形大学のスクーリングで行ったりしたのでよく知っていることもあり、一番多い旅先は京都でしょうか。
ひとりで川や水をぼーっと見たり、美味しいお店でご飯を食べたり。年に3回くらいの旅から制作のヒントをもらうことが多く、大切な時間です。
その他の活動として、2007年3月に京都芸術大学を卒業した後4月から鍼灸の専門学校へ通い、資格を取って50歳の時に開業しました。鍼灸の仕事はご紹介のみで予約が入った時だけやっています。
そのほか小学校1年生から、途中弾かなかった時期もありますがバイオリンを続けています。大学でオーケストラに所属し、現在は社会人オーケストラで毎年公演に参加しています。練習は欠かせません。
「織り」「鍼灸」「音楽」が私の人生の大切な3つの柱です。
飯田さんのお話を伺っていると、
「継続」の力を感じます。
3つのことを長く続けていて、さらに学び続けることは難しくはないですか。
―飯田さん
やるべきじゃない時に無理に物事を進めるとどこかに支障が出てくると思っています。でも、自分が興味を持っていて、やりたいと思ったことがうまくいっているなら続けて良いと思っています。
織りも音楽も鍼灸も私の中には自然とあることなので、続ける努力は必要ですが無理はないです。
自然布の会にも参加していますし、先日は福島県の昭和村で織姫をされていた方のところでからむしの紡ぎを教えてもらいました。からむしは2024年5月の個展(会場:西荻窪 みずのそら)で展示する予定です。
今まで学んできた知識や技法を自分の作品に取り入れて、新しい作品を見て頂きたいと思いっています。
興味深いお話をありがとうございました。
飯田みちるさんの個展の情報はSHIRO.のSNS等でも
お知らせさせて頂きます。
[取材・撮影]: 遠藤ちえ / 遠藤写真事務所 @chie3endo