家事・生活・日常 「ほんかく商店」野村智子
しばらくお休みしている間に、冬になってしまいました。秋に家族がコロナ陽性となり、家に籠もって過ごしてしていたので、まるまる1か月がぽかっと消えてしまったようです。外出できるようになり、久しぶりに歩いた近所の公園には落ち葉が積もりはじめ、季節の移り変わりが見せる色彩の変化に静かに感動していました。
そんな近況ももう1か月も前の話で、そこから家の中の秩序を再構築し、日常のリズムを取り戻すのに時間がかかってしまいました。久しぶりの読書部は、しばらく外出できなかった期間に手に取った本をご紹介したいと思います。
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以前SNSでたまたま見かけた『IN/SECTS Vol.15』の表紙に「特集 家事」とあったのが引っかかり思わず購入。しばらく読まずに表紙だけ眺めていたものを、この機会に読んでみることにしました。実は、自宅待機期間中、私自身は体調を崩さなかったので、自宅で仕事をしながらちょっと腰を据えて読書でも…と思っていましたが、いつも以上に「生活=家事」がべったりと身体にまとわりつき、読書に没頭しようという気持ちにならなかったのでした。そんな状況で、誰かにとっての家事の話を少しずつ読み進め、これまでできるだけ目を背けてきた己の暮らしにほんの少し向き合ってみるなど……。
『IN/SECTS Vol.15』
LLCインセクツ 編
LLCインセクツ(2022)
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終わらない家事にどっぷりと浸かりながら、そういえばこんなのもあったなと、本棚から探し出したのが『生活考察 Vol.6』です。2018年に発行されたものなので、コロナ禍以前の世界の生活考察。いろんな人のエッセイや対談などを読みながら、2018の世界に私もいたんだなあと、ちょっと不思議な気持ちになっていました。
『生活考察Vol.6』
辻本力 編
タバブックス(2018)
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そしてもう1冊、漫画家の今日マチ子さんがSNSで発信していた、2020年4月の緊急事態宣言からの1年間の記録をまとめた『Distance わたしの#stayhome日記』も。ずいぶん変わってしまったまちの風景や変わらないものが1枚1枚の絵の中にあり、眺めているととても静かな気持ちになる本です。緊張感も倦怠感も懐かしさも愛おしさもある日常。暮らしの中の豊かさとは、いろんな気持ちを持っていられるから感じることができるのかもしれません。
『Distance わたしの#stayhome日記』
今日マチ子 著
rn press(2021)
さて、丈夫な身体に感謝しつつ、年末に向かいます。のんびりペースの手仕事読書部となってしまいましたが、来年もどうぞよろしくお願いいたします。
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【プロフィール】
野村智子
1979年生まれ。編集・ライター・企画業。地域に伝わる手仕事やそこから生まれた産業、文化、現代の地域が抱える課題やそれにまつわる取り組みなどに携わる。本や古物を扱う「ほんかく商店」をイベントにて不定期出店。
Instagram @nomuratomoko_himazine